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非結核性抗酸菌症(NTM)とは?
結核菌には様々な仲間がおり、それらのグループのことを総称して「抗酸菌」と呼びます。このうち結核を起こす結核菌と、ハンセン病を起こすライ菌以外の菌による感染症のことを「非結核性抗酸菌症(NTM)」と言います。
結核菌は感染力が強いため、治療では専用病棟への入院が必要となりますが、非結核性抗酸菌症を引き起こす菌は人から人へ感染することはありませんので、通常の外来治療が受けられます。
非結核性抗酸菌症の原因
抗酸菌には様々な種類が存在しますが、非結核性抗酸菌症の原因菌の多くは「MAC菌(マック:Mycobacterium avium complex)」と呼ばれるものです。この菌が肺に感染することで起こる疾患のことを特に「肺MAC症」と言います。
MAC菌自体は比較的ありふれた菌で、日常的に吸い込んでいることが多いのですが、何らかの理由で肺に定着することがあり、感染症を引き起こします。しかし、その理由は未だ明らかになっていません。
非結核性抗酸菌症の症状
非結核性抗酸菌症の症状としては以下のものが挙げられます。しかし、自覚症状がない方も多く、健康診断などで偶然見つかることもあります。
咳・痰
慢性的な咳や痰は、非結核性抗酸菌症ではよくある症状です。人への感染が起こることはありませんが、他の疾患の可能性もあるので咳や痰が長引いている(数ヶ月以上続く)場合には注意してください。
血痰
抗酸菌への感染によって慢性的な炎症が起こると気管支の充血が起こり、そのために痰に血が混じることがあります(血痰)。重篤な症状のように思いがちですが、血痰は病気の重症度とは関係ありません。
発熱・倦怠感
個人差がありますが、発熱や倦怠感がみられることもあります。
体重減少
無意識の体重減少が起こることがあります。体が菌と戦うことで体力を消耗するのは確かですが、明確な理由は分かっていません。
非結核性抗酸菌症の検査・診断
非結核性抗酸菌症の診断は、以下の検査をもとに行います。基本的に体から原因菌が検出されれば診断が可能ですが、菌自体は日常にありふれたものであるため、空気中から偶然紛れ込むこともあります。そのため、複数回の検査が必要になることもあります。
喀痰検査
生じた痰を採取・培養し、その中に原因菌が含まれていないかを調べる検査です。クリニックで採取する以外にも、ご自宅で採取したもののご持参でも結構です(※)。
(※)ご持参くださる場合は事前にご連絡ください
レントゲン検査・CT検査
レントゲンやCTによって胸部の状態を確認し、画像診断を行うこともあります。基本的には上記の喀痰検査と組み合わせて行います。
非結核性抗酸菌症の治療
現代では結核の多くが治癒を期待できるようになり、治療方法が確立されつつあります。一方で非結核性抗酸菌症は未解明な部分も多く、明確な治療方法が確立しきれていません。経過が長く、自然治癒することもあるため、以下の治療方法から適宜選択して症状の悪化を防ぎます。
薬物療法
原因菌に合わせた抗生物質を服用することで治療を行います。菌の耐性化を防ぐため、複数のお薬を組み合わせて使用します。治療が長期にわたることもありますが、焦らずゆっくりと治していきましょう。
外科的処置
場合にもよりますが、病巣部の切除が効果的であることもあります。入院での処置が必要となりますので、適切な医療機関をご紹介させていただきます。
経過観察
非結核性抗酸菌症はゆっくりと進行していくケースが多く、何年も症状が出ずに自然治癒することもあります。症状が軽度であれば経過観察に留めて特段の治療を行わないこともあります。ただし、定期的な通院は継続してください。